3.ソロモンの頌歌 The Psalms and Praises of Solomon
ソロモンの作とされダビデの詩篇の後に作詞されたこの61詩篇は、その詩趣に富む様式と内容の美しさで魅力的な作である。これらの詩篇の大半は、神との情熱的、霊的コミュニオンである。これらは、主[なる神]に究極の信頼を置き、その創造物すべてをつかさどる主の抗いがたい力と意思とに感嘆の叫びを上げながら、主を篤く敬い、神を賛美している。また、これらは三位一体を、神の言葉キリストの受肉を、処女マリアからの誕生を、そして主の力と主権を告白している。
これらの詩篇は、時代をわずかに下った1909年、イギリス人オリエンタリスト、レンデル・ハリスによりティグリス川近郊で発見された。ハリスは、美しく明快な文字により15世紀初頭に書かれた、冒頭と末尾がわずかに欠けた、小さなシリア語の本を見出したのである。この本は、42[篇]の短い賛美歌もしくは詩篇から成り、112ページから成っている。この写本を、元はエジプトのシリア人修道院にあった、10〜11世紀ごろの西方書体と組み合わされたエストランゲロ体で書かれている、大英博物館の古代写本(MS.14538)と比較し、ハリスはこれらの詩篇のうちおおむね19篇はソロモンに帰されるものであることを見出した。これら詩篇は長編であり、そのうちのひとつは52節からなっている。ハリスはまた、ピスティス・ソフィアと呼ばれる、コプト(テーベ)語でソロモンの詩篇が所収されている、ラテン語にも訳された特殊なコレクションを使用した。彼は、そこからシりア語写本に欠けていた部分を写し、アルフォンス・ミンガナと共に1916年、上述の写本に基づく完本を英訳つきで出版した。ハりスとミンガナの両者は、前後に6ページあればこの写本は完備されると考えている。
これらの詩篇を研究した学者らの大半は、これらはバル・ダイサンか彼の弟子によって著されたものであろうと考えている。したがって、彼らはこれらの成立時期を2世紀末か3世紀初頭としている。他にバル・ダイサンの時代に先立つ不可知論者の作で、バル・ダイサンはそれを読んでいたのだろうと考える者らもいる。チャボトはこの詩篇は1世紀末から2世紀初頭に書かれたものと考えている。
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資料:THE HISTORY OF SYRIAC LITERATURE AND SCIENCES
/ PATRIACH IGNATIUS APHRAM I BARSOUM
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