聖母マリアとイエスの弟子達
シリア正教カテキズム ―前総主教エフライムTバルソウムによる―
   この章はThe Shoter Catechism of the Syrian Orthodox Church of Antiochの訳です。

 

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■ 神の掟
1-神の掟とはどんなものですか?
神が預言者モーセによってイスラエルの民に授けられた十戒のことです。そのうち4つは神に関すること、残りの6つは隣人に関することです。主キリストはこれらを二つの掟に要約されました。神を愛することと、隣人を愛することです。
2-掟を言ってください?
1.私は主、あなたの神である。あなたには、私をおいて他に神があってはならない。
2.あなたはいかなる似姿も彫像も保持してはならず、それらに礼拝したりひれ伏してはならない。
3.主の御名によっていたずらに誓ってはならない
4.安息日を心に留め、これらを聖別せよ。
5.あなたの父と母を敬え。
6.殺してはならない。
7.姦淫してはならない。
8.盗んではならない。
9.隣人に対し偽証してはならない。
10.隣人の家、妻、召使、そのほか彼のものである何ものをも欲してはならない。

3-神は掟を守るものたちに何を約束されましたか?
神はこの人生では祝福と良いものを、来る命では栄光を約束されました。
4-そしてこれらを破る者達には何を警告されましたか?
彼らには災難と悪疫があり、後には永遠の罰があると警告されました。

■第1戒と第2戒
1-神は1つ目と2つ目の掟で何を私達に命じましたか?
神はこれら二つの掟によって、私達が神を知るようになり、神を愛し、神に仕え、神の神聖な権威を最も高く敬い神だけを礼拝すること、礼拝するためにいかなる似姿も彫像も作らないことを命じました。
2-これら二つの掟によって何が禁じられていますか?
神の唯一性の否定、いと高き神への不信、異教崇拝、魔術、沽聖。
3-異教崇拝とは何ですか?
創造主のみに帰されるべき誉れを被造物に帰することです。
4-魔術とは何ですか?
魔術は悪魔の業で、有害なことが利用され不法な手段が復帰させられたり、不明な事柄を通して情報を求めたりします。魔術にはいろいろな種類があります。
5-沽聖とは何ですか?
沽聖とは金銭やその他の利益のための聖物売買に関するあらゆる事柄です。
6-聖人や彼らの似顔絵を敬うことはどうなのでしょうか?
私達が聖人に払う崇敬は限られており、それは崇拝ではありません。私達が彼らを尊敬するのは彼らが神に愛された人たちであり、神の純粋な人たちだからです。私達は彼らの似姿に神の御心にかなう流儀で敬意を払いますが、これは私達が神の教会や礼拝の助けとなる聖別された聖品を敬うのと同様に、それらが祝福され助けになる彼らの人生の形見だからです。

第3戒
1-3つ目の掟で神は何を警告されましたか?
神は3つ目の掟で、彼の聖なる御名によりいたずらに誓うことを警告されました。私達はむしろ御名を何よりも敬い、唇でも心でも神に栄光をささげるべきです。
2-誓いとは何ですか。
誓いとは、私達が確信させたり約束したい事実の証言のために、真偽を問わず、神を呼ぶことです。
3-本当のことを誓うことはかまいませんか?かまわないとしたらどんな場合でしょうか?
重要な事柄で必要な場合に本当のことや、聖職者や一般の陪審員の宣告の後で誓うことはかまわないでしょう。
4-この掟に加え何かありますか?
これに加え、宣誓として、もしくは冗談や軽んじて神の尊い御名を使用すること、神に奉献された聖品にかけて誓うこと、冒涜、呪い、果たされない誓願をすることを禁じる命令があります。
5-冒涜とは何ですか?
冒涜とはいと高き神とキリスト者の信仰を高ぶって蔑むことです。いろいろな場合がありますが、率直な真理に反するかたくなさが見られるものです。
6-呪いとは何ですか?
呪いとは悪を私達自身や隣人に呼び込むことです。これは決してしてはなりません。
7-誓願とは何ですか?
誓願とは神の目から見ると、神に受け入れられる何かをするという固い決意です。私達はこの決意を正確に果たさなければなりません。
8-誓願の条件はいくつあり、それは何ですか?
誓願には5つの条件があります。すなわち、注意深さ、自主性、実行可能性、よりすばらしい善をもたらすものであること、その願いが神に向けられていることです。

第4戒
1-4つ目の掟で神は何を命じられましたか?
安息日を守り、全ての仕事を休んで祈りの内に神に栄光をささげること、礼拝へ出席すること、聖なる本を読んだり朗読を聴くこと、良い行いをなすことにより、それを神聖なものとすることを命じられました。
2-なぜ新しい契約では土曜日の替わりに日曜日が取り置かれたのですか?
世の救いのためキリストが死からよみがえられたのも、使徒達に聖霊が注がれたのもこの曜日であったために、日曜日が特別に取り置かれました。
3-日曜日にはどんなことが伴いますか?
聖なる祝日が祝われなくてはなりません。これらは神と教会により、礼拝と聖人の記念のために取り置かれた特別な日です。
4-主の日に隣人を働かせることは悪いことですか?
そうです。無給であったとしても悪いことです。

第5戒
1-5つ目の掟で神は何を命じられましたか?
両親を大切にし、尊敬し、愛すること、そして彼らに出来る限り従い、特に彼らが老いたときは彼らの要望と必要のために仕えることを命じられました。
2-この掟を守る人にはどのような報いがあり、これを犯す人にはどのような罰がありますか?
神はこの掟を守る人には祝福とやすらかな長寿を約束され、これを犯す人には天罰と死を言い渡されました。
3-両親の子らへの義務は何ですか?
両親の義務は生活に必要なものをもって子らを養い、良く育て上げ、信仰の大切さ、実直なあり方、礼儀を彼らに教えることです。
4-両親の命令が神の掟に反する場合、私達は両親に従うべきでしょうか?
いいえ。
5-この掟に加えて何かありますか?
精神的、社会的年長者への従順と尊敬があります。一方彼らには私達を公正と真実をもって統治することが要求されます。

第6戒
1-6つ目の掟で神は何を禁じられましたか?
神は私達が私たち自身や隣人を、頭の中でも、言葉でも、行いでも、いかなる方法であろうと殺すことを禁じられ、身体的、道徳的に、もしくは来るべき世で、隣人に害を与えるかもしれない全てのことを避けるよう要求されました。
2-殺人の罪にはどんなことが含まれますか?
感情的な憎しみ、復讐、怒り、呪いを好むこと、傷つけること、すなわち、死に至らしめることがら、魂に戦いを挑む悪い見本や堕落した助言を仕掛けること。
3-隣人に害を及ぼした人にはどんなことが要求されますか?
その人は言葉でも行いでも出来る限りを尽くしてなされた害を償わなくてはなりません。
4-他にどのような人がこの掟に反して罪を犯したこととなりますか?
その人の命令や助言により死をもたらしたり、隣人を守るためできることをしなかった人はこの罪を犯すこととなります。

第7戒
1-7つ目の掟で神は何を禁じられましたか?
神は7つ目の掟で姦淫を犯すことを禁じられました。これは、思い、言葉、行いの制御と自制に反する物事へ向かう人間を含む動物の無制御な情欲です。
2-この罪にはどんなことが含まれますか?
猥褻行為、肉欲にふけること、血族との婚姻。
3-どうしたらこの罪を逃れることが出来ますか?
この誘引となる全てのこと、すなわち悪い競争や不道徳な娯楽、わいせつな本、深酒、大食、怠惰を避けることによって逃れることが出来ます。私達はむしろ告白、聖体拝領、断食、聖なる書物を読むこと、いつ死んでこの地上から呼ばれるかも知れないと考えることを常の習いとするべきです。
4-この罪に陥ったならどうするべきでしょうか?
この罪に陥った人はすぐに自分自身を悔い改めの清い水で清めるべきです。
そのままでいると盲目的になり良心が弱められてしまうからです。

第8戒
1-8つ目の掟で神は何を禁じられましたか?
盗むこと、すなわち隣人からどんな方法、手段によっても金銭を奪うことを禁じられました。
2-盗みに代表される罪にはどんなものがありますか?
売買でのごまかし、詐欺、恐喝、略奪、高利貸し、悪者が勝利するよう他人の金銭の一部をその人の不法な幇助の見返りに受け取るものである贈収賄、また盗まれた金銭を保持することや借金を返さないこと、賭博があります。
3-この罪を悔い改めたなら盗んだ金銭を返さなくてはなりませんか?
そうです、力の及ぶ限り盗んだ金銭を奪われた人に返すことは、この罪の許しを求めるなら絶対的に必要です。それにより被られた損害もまた償われなくてはなりません。

第9戒
1-9つ目の掟で神は何を禁じられましたか?
偽証すること、すなわちいと高き神を誤った証言の証人に呼び出すことを禁じられました。
2-この罪にはどんなものがありますか?
嘘、陰口、非難、他者に対する悪意があります。
3-嘘とは何ですか?
嘘とはだましたり陥れたりする意図で真実であると知っているものと異なることを述べることです。
4-悪口とは何ですか?
悪口とは、他の人をその人が犯していない罪で責めたり、その人が有していない悪いところがあるとしたりすることです。

5-陰口とは何ですか?
陰口とは隣人の過ちをその人のいないところで現実的な理由無くしゃべることです。
6-非難とは何ですか?
非難とは、望ましくない行為について、十分な証拠無く他人を裁く時、心の中に現れるものです。
7-悪意とは何ですか?
悪意とは兄弟について、真実に反してその人の名誉を傷つけ悪い考えを抱くことです。
8-これらの悪いことで隣人を傷つけた人はどうしなければなりませんか?
その人は彼が悪いことをした人たちの前で、自分の過ちを認めなければなりません。
9-どうすれば私達はこの罪を避けることができますか?
行為と言葉のすべてにおいて、正直を常の習慣とすることによりこの罪は避けられるでしょう。

第10戒
1-10番目の掟で神は何を禁じられましたか?
神は10番目の掟で全ての不当な情欲、すなわち隣人の財産や、妻、召使など隣人のものであるすべてのものを欲することを禁じられました。
2-欲は罪として禁じられているのでしょうか?
そうです。欲は悪い考えを温存することから生じるものですから、禁じられています。
3-どうすればこの罪を避けることが出来ますか?
人格の潔白とキリスト者としての自制にしっかり執着することと、これら二つの徳に反する全ての考えを打ち砕くことにより可能です。
4-神の掟を守るためどのようにすることが私達に要求されていますか?
もし私達が、私達を助けてくれるよう神の恵みを求め、それをなすための固く強い意志、霊的な熱心さを持つなら、これらを守ることが可能ですから、精一杯誠実
にこれらをなすことにより神の掟を守ることが要求されています。

教会の掟
1-教会の掟を言ってください。
1.日曜日と祝日を守ること。
2.日曜日と祝日の礼拝に参加すること。
3.四旬節とその他の祝祭を祝うこと。
4.罪を告白すること。
5.少なくとも年に一度聖木曜日には御聖体を拝領すること※。
※もっとも信者は出来る限り頻繁に告白し聖体を拝領することが奨励されます。
6.十分の一税を納めること。
7.禁じられている(悔悛や断食の)時期に結婚することを慎むこと。
2-どのようにして日曜日と祝日を神聖なものとしてささげるべきですか?
日曜日と祝日には、畏敬の念を持ち、へりくだり、信仰にあって、意識を集中し、最初から最後まで聖なる典礼に出席しなければなりません。祝日にはキリストの記念にキリストがもたらしてくださった救いの恵みを考えるべきです。聖母と聖人の祝日には、彼らの手本により導かれるよう、また彼らの私達へのとりなしを願い、彼らの徳を観想するべきです。
3-断食とは何ですか?
断食とは、禁欲と節制のため、特定の規定食の簡素な品に自らを制限し、特定の不適当な食物を避ける、飲食の自制です。
4-必須の断食には何がありますか?
四旬節、クリスマス、聖母被昇天(8月15日)の前の決められた日、使徒の祝日(6月29日)、ニネベの断食、復活祭から五旬節までの50日間を除く通年水曜日と金曜日の断食があります※
※クリスマスの断食は主の誕生祭に先立つ10日間に短縮されています。ニネベの断食は常に3日間、四旬節は48日間です。使徒の断食は現在では6月29日に先立つ3日間、乙女マリアの断食は8月15日の被昇天に先立つ5日間に短縮されました。
5-断食しなかった人にはついてどのように考えるべきですか?
不遜や不注意により断食を行わなかったものは誰でも深刻な罪を犯すことになります。ただし、教会の長により断食の除外が与えられることもあります。
6-十分の一税とは何ですか?
十分の一税とは施しを与えること、満願のささげもの、教会や聖職者の必要のため教会により私達に求められる務めです。私達は心から喜んでささげなくてはなりません。最も重要な信仰義務のひとつである慈善がこれらに加えられますが、これにより私達はより不運な兄弟姉妹たちを助けることが出来ます。


1-罪とは何ですか?
罪とは神の命令とその聖なる掟に反する思い、言葉、行いの全てです。
2-何種類の罪があるのですか?
罪には二つの種類があります。原罪と自罪です。
3-原罪とはどのようなものですか?
これは私達の父アダムの不従順から受け継いだものとして全ての人類に及ぶ罪です。
4-自罪とはどのようなものですか?
これは意図的に思い、言葉、行いにより犯された罪です

5-自罪の二つの区分とはどんなものですか?
自罪は2種類に分けられます。大罪と小罪、言い換えれば死に至る罪と偶発的な罪です。
6-死に至る罪とはどのようなものですか?
これはその人が知っていながら、どうにもならない性癖から、十分な意識と理解をもって犯す罪です。
7-偶発的な罪とはどのようなものですか?

これは知らずに、もしくは十分な意識無くなされた小さな事柄での過ちです。これは私達の霊的命を害します。
8-罪源とはどのようなものですか?
これらは多くの悪の原因となる嘆かわしい罪です。高慢、物欲、憤怒、色欲、貪食、ねたみ、怠惰があります。


1-徳とは何ですか?
徳は魂を快いものとする人格の価値ある装飾です。
2-徳には何種類がありますか?
2種類あり、神への品行にかかわる信仰の徳と、私たち自身にかかわり社会での私達の品行を完全にする道徳があります。
3-信仰の徳にはいくつの種類があり、どんなものがありますか?
信仰の徳には3種類があります。信仰、希望、愛です。
4-信仰とは何ですか?
信仰とは、神が寛大にも与えられた、自然の法則を超越する神聖な恵みの賜物です。これにより、私達は神と神が私達に聖書と教会を通して述べられた真実を信じます

5-どんな人が信仰に反して罪を犯したことになりますか?
神とその教会を疑い、その信仰を明らかにしないか、転向するか、信仰の信条をおろそかにする人は信仰に反して罪を犯すことになります。
6-希望とは何ですか?
希望とは神が寛容にも私達に与えられた神聖な賜物であり、これにより私達は堅い希望をもって神を信頼し、確信を持って神に頼り、永遠の幸福を神に期待します

7-どんな人が希望に反して罪を犯すことになりますか?

神の救いに信頼し続けることをしないか意図的に悔い改めを遅らせ、なんであれ神ご自身に劣るものに信頼した人は希望に反して罪を犯すことになります。
8-愛とはどのようなものですか?
愛とはそれにより私達は神をただ神ゆえに何よりも愛し、隣人をただ隣人ゆえに愛する徳です。愛は最も偉大な徳です。
9-私達はどのように私達の愛を示すのでしょうか?
私達は私達の愛を私達の隣人に霊的物質的両面で
親切な行いにより示します。
10-霊的に親切な行いはいつくあり、それは何ですか?

それらは7つあります。すなわち、無知な者を教えること、問う者たちに良い助言を与えること、嘆いている者らを慰めること、はぐれている者を正しい道に連れ戻すこと、罪人への説諭、私達に悪事を働いた者達を許すこと、そして生きている人と死んだ人への祈りです。
11-物質的に親切な行いはいくつありそれらは何ですか?
それらは七つあります。すなわち、飢えた者を食べさせること、渇いている者に飲ますこと、裸の者に着せること、牢屋にいるものを訪ねること、病人を見舞うこと、見知らぬ人に宿を貸すこと、死者を埋葬することです。
12-道徳を挙げてください?
道徳はたくさんあります。最も重要なものは、謙遜であること、自制、慎重さ、克己、従順、正義、慎み、忍耐、節度、誠実さ、寛大さ、熱意、強さ、勇気、堅固さです。キリスト者の高貴な魂を美しく飾るのはこうしたものです。

出典:The Shoter Catechism of the Syrian Orthodox Church of Antioch,p66-92


   
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